ストーンホワイト:アノア学園マジック科

満月の夜に轟く狼男の雄叫び。
闊歩するゾンビや死霊たち。
そんなイニストラードの中でも一際存在感のあるヴォルダーレン邸では今夜も華やかなパーティーが催されていました。

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「今宵もパーティーにお集まりいただきありがとうございます。
本日の統率者戦に入る前に、皆様にお見せしたいものがあります」
主宰のオリヴィア・ヴォルダーレンはそういうと懐から拳大ほどの石を取り出しました。
見たところ何の変哲のないただの石。
【オリヴィアのウィークリー統率者――第666回 石の賢者、ダミーア】を期待した吸血鬼たちから疑問の声があがります。
「それはいったい何ですかな?」
「石……にしか見えませんわ」
それらの声を聞くたびにオリヴィアから笑みがこぼれるのでした。
「皆様、私がただの石を大仰に紹介するとお思いで?
これはとーっても貴重で、面白いものですわ」
オリヴィアは言いました。
さきほどまで落ち着きのなかった吸血鬼たちは石に魅入られています。
そして、次にオリヴィアの発する言葉を待ち構えています。
「この石はある者の魔力で作られていました。
あの苛立たしいマルコフ家のお坊ちゃんの魔力によってね」
その言葉に舞踏場は騒然としました。
ソリン・マルコフによって作られた石の作品といえば、昨年破壊された獄庫に他なりません。
ある者は貴重な獄庫の破片をより近くでみようと身を乗り出し、ある者は苦々しい記憶を呼び起こされ発狂し……
ヴォルダーレン邸のもつ優雅とは程遠い、雑然とした空気が立ち込めています。
「静かになさい!
何もあの裏切り者の功績を讃えるために獄庫の破片を取り寄せたのではありません。
むしろ逆ですよ、さぁ耳を澄まして」
オリヴィアは会場に通る声で言うと、今度は石に尋ねました。
「獄庫よ獄庫、獄庫さん。
このパーティーの主役は誰でしょう」

『それはあなたに御座います、オリヴィア様。
見る者をくぎ付けにする美貌とパリコレもビックリの意匠を凝らしたドレスが今宵も素敵です』

するとどうでしょう。
石の破片が声を発したではありませんか。
この現象には獄庫を恐れていた吸血鬼も興味津々です。
「それだけではありませんよ。
1千年前の記録をお出し」

『ザーーーー……

「獄庫よ獄庫、獄庫さん。
この次元で一番美しいものは誰だ」
『それはもちろんわが主にございます。
アヴァシン様と並べば今年度のベストオブイニストラード獲得は間違いないでしょう』
「そうかそうか、まぁ私のような闇の心の持ち主にそんな浮ついた賞は不要なのだがな。
ハーッハッハッハ」

ザーーーー……』

会場はドッと笑いに包まれました。
闇の心の持ち主が浮ついた高笑いを発するという黒歴史など、そう耳にすることもありません。
「まだまだ終わりではありませんよ。
さ、次はこれにしましょう。
迷惑メールフォルダをお出し」
今度は石から光線が出され、舞踏場の壁にズラリと文字が打ち出されました。

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from:ナヒリ
件名:GPゼンディカー
本文:チームリミテッドに決まりましたね。
次もウギンと一緒に3人で出ませんか?

from:ナヒリ
件名:エルドラージが
本文:エムラクール・ウラモグ・コジレックがチームを組んだようです。
これは強敵ですが、前回も3人で倒したので、今回もきっと大丈夫ですよね。

from:ナヒリ
件名:チームリミテッド
本文:出てくれますよね?
返事待ってます

from:ナヒリ
件名:ウギンから
本文:返事が来ないどころかメールが送れなくなりました。
何かあったんでしょうか。

from:ナヒリ
件名:寂しい
本文:どうして返事くれないんですか。
電話もしたのに何回かけても繋がらない。
from:ナヒリ
件名:今すぐ
本文:あなたに会いに行きたい、行きたいのに。



この後も、ホラー次元であるイニストラードの吸血鬼たちが恐れおののくほど重さを増していくメールが延々と続くのでした。

「これは……」
「重い、重すぎる……」
「読んでいると貧血を起こしそうだわ」
舞踏場全体がずっしり重い空気に包まれました。
「さらに今からお見せするのが、実際に石術師が会いに来たときの映像です」
オリヴィアはさらなる追い討ちをかけようとするも、吸血鬼たちの必死の懇願で映像は流されずに済んだのでした。
「あらあら、面白くありませんわね。
『二人でモダンの大会に出るっていうまで帰りません』
『うるさーい、獄庫作って疲れてるし、スタンで忙しい!チームリミテッドもモダンもやらーん!』
のやりとりなんて笑いなしには見られないというのに」
「それはとても素晴らしい映像なのでしょうけど、さきほどの記録にあった美しいものを獄庫が決める魔法、試してみたく存じますわ」
やはり映像を流すなんて言われてはたまりません。
一人の吸血鬼が高貴なる淑女の心を持ってさりげない話題転換を行いました。

「それは面白いですわね、ではさっそく。
獄庫よ獄庫、獄庫さん。
この次元で一番美しいものは誰でしょう」
オリヴィアの呼びかけに、再び獄庫が反応します。
『それは……おや、この次元に美しいものが現れました。
花崗岩のような白い肌、意思が強く、物事を完遂できる強い瞳、技術を磨いてきた長い指。
異なる次元より現れし、とても美しい娘がおります』
過去の映像を見たオリヴィアにはそれが誰かすぐに思い浮かびました。
まさか、あの石術師がまだこの次元に……

ギイイイイ……

それと同時、舞踏場の扉が大きな音を立てて開きました。
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「まさか、このヴォルダーレン邸にやってきたというのかい、ナヒリ!」
恐れを悟られまいと力強く声を発するオリヴィア。
異変を察した吸血鬼たちも扉へと身構えます。

そこにいたのは石術師のプレインズウォーカーではありませんでした。
予期せぬ来客は何日も洗ってないようなヨレヨレの服をまとい、空民から預かったカバンを大事そうにかかえる冴えない中年男性でした。
「あのぉ、すみませぇん。
エドガー・マルコフさんのお宅はこちらでよろしかったでしょうか。
私ぃ、ジェンリクっていうんですけど、ウサギみたいな髪の女性に頼まれごとをされましてねぇ」
吸血鬼たちは一瞬あっけにとられたものの、
「ひっとらえよ!」
オリヴィアの一言でジェンリクをあっさりと捉え差し出しました。
「よくも私を恐れさせてくれましたね。
そのうえよりにもよってマルコフと間違えてここに来ただなんて。
今すぐ私たちのお口直しの一杯にしてもかまわないんですが、一つ余興を思いつきましたわ。
この獄庫、壊れる前はあらゆるものを封じ込めていたのをご存じですか?
そして、その能力は今でも発揮できると思いますか?」
オリヴィアは獄庫を握りしめた手をジェンリクの胸に押し当てました。
すると、石は淡い光を発し始めたではありませんか。
「お助け、お助けぇ!!」
ジェンリクの叫びもむなしく、彼の体が獄庫の破片に吸い込まれていきます。
「成功ですわ。
ん?あら?
ちょっと、私の手まで光に包まれていませんこと?
何この力!
誰か、私を引っ張り上げなさい!
お願い助けて、華やかさの欠片もない闇に閉じ込められるなんてイヤぁぁあ!!」
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こうして哀れなジェンリクとオリヴィアはイニストラードから存在を消しました。
誰も持つもののいない石は床に落ち、なき主に代わって沈黙が支配する舞踏場にコツンという音を響かせるのでした。

⇒ ⇒ ⇒

キーンコーンカーンコーン

キーンコーンカーンコーン

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「ズルゴさんさようならー」
「おう、気をつけて帰るのだぞ」

鐘突き用務員として1年、ズルゴはアノア学園の生活に満足していました。
ここには戦はなく、放課後生徒たちとマジックを楽しめる。
ズルゴはこの学園の平和を何としても守らなければならないと心に決めていたのです。
だからこそ、中庭に突然謎の光が発せられたときには自身の危険を顧みず現場へと駆けつけました。

ズルゴが駆けつけたときにはもう光はしぼみきっており、代わりに煌びやかなドレスをまとう女性とうらぶれた格好の男性が口論を広げていました。
「おめぇさん、なんてぇことをしてくれたんだ。
この日誌を届けねぇと大変なことになるっつう話だのに」
「元々は貴方の愚かさが招いたことでしょう。
届け先を間違えなければ私まで……
その場で殺して差し上げたいところですが、貴方にも獄庫に閉じ込められる苦悩を味わってもらわなくてはなりませんわ」
なんだかやっかいなことに巻き込まれそうな予感を感じましたが、学園内のトラブルを放っておくわけにはいきません。
ズルゴは意を決して二人の間に割って入りました。
「おい貴様ら、いったいここで何している。
そもそもこの次元の者ではないな。
さてはサルカンと同じ魔術を使うのか」
すると男性はわんわん泣きを始めました。
「うぅ、私だって何をしているかわからねぇよぉ。
吸血鬼の次はおっかねぇ化け物、もうたくさんだぁ」
事情がさっぱりわからないズルゴはますます困りました。
「おい、泣いていては何もわからんだろう。
俺はこの学園を守らねばならんのだ。
女、これはどういった事情なのだ」
男性に聞いても埒があかないと感じたのでもう一人に事情を聞くことに。
「このような怪物がいるということはやはり獄庫の中。
あぁ、私の美貌はあのような小さな石のなかではかなくなってしまうのね。
おのれマルコフ!
どこまでも私の華やかな人生に害をなすというのか!」
しかし女性のほうも自己の世界に入り込んでしまっている様子。
さらに困ったことに下校中の生徒に目撃され、
「ズルゴさん修羅場じゃね?」
「三角関係かな、スナックのママを常連さんと取り合っているなんて、案外やるもんだね」
「え、あれドラッグクイーンじゃないの?
ズルゴさん実は取り立て屋で、あのみすぼらしいおっさんの骨の髄までしゃぶろうとしてるところかと」
などとひそひそ話をされるからいてもたってもいられません。
「えーい、ここでは面倒だ。
生徒指導室か保健室か……そうだ!
“教えて!マジシャンズフィールド”」

⇒ ⇒ ⇒

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ジェンリク「今度は何だぁ?」
オリヴィア「真っ暗闇!あぁ、これが獄庫の真の姿……」
ズルゴ「なんのことだ?これはアノア学園の教職員が生み出す、マジックを楽しむ空間だ」
オリヴィア「マジック!獄庫でも遊べるのは救いですわ」
ズルゴ「さっきから獄庫獄庫と、いったいそれは何だ?余計な邪魔は入らないからまずは事情を話せ、えーと、名はなんだ。俺はズルゴという」
オリヴィア「私はオリヴィアと申します。そちらの男性はジェンリクというらしいのですが、なにぶんさきほどお会いしたばかりでして」

以下、オリヴィアによる説明


オリヴィア「便利な空間だこと」
ズルゴ「だろう。貴様らは獄庫というアーティファクトによって飛ばされてきたのだな。
安心しろ。俺もここの出身ではないが、獄庫の中でないことは保障できる」
ジェンリク「良かったよぉ。しかしどうやって帰ればいんだ?」
オリヴィア「そうよ!私の名声が失われた世界なんて……貴方が無様なミスさえしなければ!」
ズルゴ「うるさい!最初に考えるべきはマジックを楽しむことだろう。
その上で貴様らにいうべきはこれだ」

~☆~ 思いやりをもったプレイを大切にしよう ~☆~

オリヴィア「この文字は?不思議な呪文ですね」
ズルゴ「ふん!まだ俺にはルールや構築、プレイングの話はできないからな。
貴様らにはまずマナーの話からしてやろう」
ジェンリク「しっかし、なんだってマナー?」
ズルゴ「マナーが目指すものは貴様の抱えている問題と同じだからな」
オリヴィア「私たちの間にある問題?ほとんど初対面ですわよ」
ズルゴ「マジックは一人で遊ぶものではない。だからこそ、相手の気持ちを思いやらねばならん。
それがなんだ、貴様らは会ったばかりというのに揉めてばかりではないか」
ジェンリク「それはこの吸血鬼が……」
ズルゴ「勝手に人の家に入ったのは貴様だろう」
オリヴィア「そうでしょうとも、小汚い恰好で無礼な作法をしたのだから、当然ですわ」
ズルゴ「貴様もだ。話も聞かずにいきなり牢獄に放り込もうとしたのだろう」
オリヴィア「ヴォルダーレン邸では私がルールです」
ズルゴ「ここはアノア学園だ。
いいか、学園の入口には3つの標語が飾ってある。
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《No More 威嚇行為》

アノアデザイン鉄の掟2
《No More 不衛生》

shakutoredo2
《No More シャークトレード》

ジェンリクが不衛生で迷惑をかけ、それに対しオリヴィアが威嚇行為をした。
相手の気持ちを考えないから問題が起きたのだ!」
ジェンリク「不衛生かぁ、たしかに研究に没頭してて洗濯なんてここ数日した記憶がねぇなぁ」
オリヴィア「なんてこと!そんな身なりで私の屋敷に入ったというの!
ズルゴさんといいましたね、今すぐ講義、聞かせてくださいまし」
ズルゴ「この次元のカードショップは往々にして十分なスペースが取れないことが多い。
隣に座る人物の体臭などは非常に目立ち、相手を不快にさせやすい。
そもそも届け物をするのだから身なりくらい気を付けるだろう」
オリヴィア「よく言ってくださいましたわ」
ズルゴ「だからといって数人がかりで押さえつけるとはな。
マジックは複数人で遊ぶものだからこそ、必然的にコミュニティができあがるだろう。
だが大会などに出れば当然グループ外の者とも対戦するのだ、排他的であれば楽しみを取り逃がしてしまうぞ」
ジェンリク「そもそも吸血鬼は家ごとで棲み分けられているからなぁ」
ズルゴ「チームで団結するのはいいことだが、いがみ合うのはいただけない」
オリヴィア「事情がありますのよ」
ズルゴ「シャークトレードについては言うまでもないだろう。
騙して自分だけいい思いをしても、後には何も残らないぞ」
オリヴィア「貴族たるものそのような下賤な行いなどするものですか」
ジェンリク「そもそもトレードなんてしたことねぇなぁ」
ズルゴ「もちろんこれらは基本中の基本でしかない。
マナーの先にあるもの、それはみんなで楽しむ空間を作ることだ。
みんなとは仲間内だけではなく、会場全てをさす」
ジェンリク「舞踏場に私が入ったとき、吸血鬼どもは見世物として扱うのではなくゲストとして扱えってこったなぁ」
オリヴィア「言ってくれますわね、作法も守らずパーティーに立ち入ったのはどちらだったかしら」
ズルゴ「つまりはお互いが気を付けるってことだな。
店や大会会場での迷惑行為なんてたくさんあるぞ。
・大声で騒ぐ
・荷物のおきっぱなし
・ゴミを床に捨てる
・狭い会場で何席分も広げる
・入口や通路を陣取って談話する
など、挙げるとキリがない。
本人たちが気づいていない場合もあるが、まずは意識することだ」
ジェンリク「その衣装、店舗大会だとさぞ迷惑をかけるだろうなぁ」
オリヴィア「TPOくらいわきまえますわ、貴方と違ってね」
ズルゴ「いざプレイが始まってからも気を付けることは多い。
特に大会の場合は周りを気にしないことで失格になることさえある。
フェイズの宣言があいまいだったり、そもそも無言でプレイされると優先権がいつ回ってきたかがわからない。
確認はしっかりせねばならないのだ。
確認といえばこの次元の慣習なのだが、プレイのはじめやサイドボードを触った際には相手に枚数を提示しているな」
オリヴィア「あら、丁寧なこと。見せる義務などないのでしょう」
ズルゴ「ない。その上で相手に安心感を与えるために確認をとりあっているのだ」
オリヴィア「たしかに、不正防止と自らのミスをなくすためでもあるのですね」
ズルゴ「場にカードを並べるときも気をつけるのだ。
どこから場でどこまで墓地かわからない、土地が重なって何枚あるかわからない、などはトラブルの元だ。
プレイスペースの狭いこの次元だからこそ特に注意するのだ」
ジェンリク「私はよく場が汚いと言われるなぁ」
オリヴィア「予想通りで安心しましたわ」
ズルゴ「最近はトークンや紋章の生成、カウンターの使用が多くなっている。
これも場の混乱を招きやすい。
例えばこの《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》だが、トークンと紋章を唱えたターンに生成できる。
それだけでなく、クリーチャー化するため忠誠度カウンターと+1/+1カウンターが両方乗ることもあるのだ」
ジェンリク「欲張りなカードだなぁ」
ズルゴ「それらをわかりやすく相手に伝えることが大切だ。
トークンカードやマーカーはキチンと用意するのだぞ。
そしてトークンはデッキのカードと混ぜてはいけない。
スリーブやケースを変えるなど、注意が必要だ」
ジェンリク「ひえぇ、そんなに丁寧にしないといけないのかぁ」
ズルゴ「観戦者も当然プレイヤーやジャッジのことを考える必要がある。
後ろから話す声がプレイヤーに聞こえるとゲームに影響を与えかねないからな」
オリヴィア「常に1プレイヤーとして心構えを持たなくてはなりませんね。
貴族に通ずるものがありますわ」

ズルゴ「ここで少し休憩するか。ジェンリク、貴様研究とは何をやっているのだ」
ジェンリク「えぇ。イニストラードの月についてと、後は統率者だな。
学者仲間で流行っていてよぉ」
オリヴィア「あら、ヴォルダーレン邸でもブームが来ていますわ。
私もパーティーの演目でデッキ紹介をいたしますの」
ズルゴ「俺もやっとデッキを作ったところだ。
せっかくなんで見てもらえるか」

⇒ ⇒ ⇒

統率者デッキ診断が終わったころ、オリヴィアとジェンリクの体から淡い光が漏れだしました。
「貴様ら、いったいどうしたというのだ」
たじろぐズルゴをよそに、二人は喜びました。
「この光は……もしかしてぇ!」
「そのようですわね、私の仲間が破片を破壊したのでしょう」
元の次元に帰るということはもう二人とマジックができないであろうこと、一方で自分はタルキールに帰れないこと……
ズルゴは様々な想いを噛みしめながら、それを悟られないように祝福しました。
「良かったではないか。
イニストラードでも楽しむのだぞ」
「ありがとうございます。
いざヴォルダーレン邸へ。
ジェンリクさん、戻ったらマルコフ荘園までお送りいたしましょう」
そういうとオリヴィアは一足先に光の粒子に包まれ消えてしまいました。
「つまんねぇものだがうちで取れたリンゴだ。
もっといいものを準備しとけばよかったんだがなぁ」
ジェンリクはリンゴを手渡し、そのまま消えてしまいました。

出会いと別れ。
マジックは人と遊ぶもの。
ズルゴはこれからも多くの人々と出会い、別れを経験することでしょう。
今はイニストラードへ帰った二人の思い出の詰まったリンゴを、丸かじりしようとして……
「こらー!昼ドラしてると生徒から聞きましたよ。
というか職務中におやつ食べようとしてますね。
仕事が終わってからにしなさい」
生徒の噂話を聞きつけたChunに取り上げられてしまいました。
「いや先生これはだな、話せば長くなるがカクカクシカジカで……」
ズルゴはさきほどまでのやりとりを説明しました。
「何を言ってるんですか。
次元を渡るっていうのはそんな簡単なことじゃないんですよ」
Chunはリンゴをビニール袋に入れながらズルゴの話を聞き流していました。
まずは持ち物検査から、最悪薬物検査かも……
自分の推薦で働いている用務員の不祥事を思うとChunは気が気でなりません。
「本当だ!
ついさっき元の次元に帰っていったんだ」
「いいわけは生徒指導の先生と一緒に聞きます。
部屋を抑えてくるのでひとまず掃除に戻ってください」
ズルゴは不満をかかえながらも、用務員としての仕事に戻ります。

もぞもぞと蠢くリンゴだったものが入ったビニール袋を校庭に置き忘れたまま。

mtg

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